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2022-03-20

#26 助産師 | 宮川 友美さん

助産師って、今は大学を卒業される方が多いんだけれども、私は看護学校に行って直接、助産学校っていうとこに行ったんですよ。だから21歳のときに資格を取ってからずっと助産師をしてますね。高校の時になりたかった職業のひとつが看護師さんで、いろいろ調べていく中で助産師さんという仕事を初めて知って。それで興味を惹かれて、助産学校も付属であるような看護学校に入ったのが、助産師になったきっかけですね。

ちょっと前までは、助産師さんってどんな仕事なんかイメージしづらかったと思うんです。でも最近では、吉田羊さんが助産師役をしたドラマとかもあって、そういうのを見て若い子たちが助産師という職業を知ってくれるようになってきたのかなって感じてます。最近、小学校の作品展示会に行ったら、「将来の夢」というテーマの中に「助産師さん」っていって赤ちゃんを抱っこしている作品があって。時代が変わってきてるかもと思ってちょっと嬉しかったですね。

昔は、産婆さんが地域にいて、お産は家でするんが当たり前だったんです。それがだんだん、家じゃなくて病院や施設の中に入ってしまって世間から見えづらくなったんですね。でも、やっぱり地域でお産をしたいっていう人や、今はコロナ禍で病院じゃ立ち合いが出来ないから自宅で産みたいという人もいて、もう一度少しずつ脚光を浴びてるんかも。この前、実際に自宅出産をしはった方のご主人さんが「家族とか助産師さんとかいろんな方に守られながら家で産めるって、これは最新の産み方やなあ」って言わはって。私らとしては、昔から産婆さんがやってきたことをこれからも伝えていかな、守っていかなぐらいの気持ちでやってたんやけど、それが逆に「最新の」っていう言い方してもらえたんはすごい嬉しかったなあ。

最初は出張で妊婦さんや産後のお母さんのおうちに伺って、健診やお産、相談などするところから始まったんです。子どもをお腹に宿すこと、生まれて育っていくこと、そして、お母さんがお母さんになっていくことって、暮らしの中でずっと営まれていることなんですよね。最近ではたいてい、お産を迎えるお母さんは病院や施設に行くんだけど、施設にいる期間ってほんとうに短くて。みんな帰った途端に不安になったり、悩んだりする。だから、昔産婆さんが地域にいて、そういう人たちを見守っていたように、助産師は地域に出て暮らしの中に入って行くことで、もっとお母さんの役に立てるかなってね、自分が子どもを産んだときにしみじみ思ったんですよ。実際にお母さんたちと話してみると、みんなちょっとした疑問や不安をいっぱい持ってるんです。そういうのが積み重なってしんどいお産や子育てをされている方もいらっしゃると思うと、助産師として地域に出て、ちょっとしたことをすぐに相談できる場所になれたらなと思うんです。

助産院って、助産師さんだけがそこにいる訳じゃなくて、特にここはいろんな専門家の人が関わってくれています。人ってみんなそれぞれ、お料理とかヨガとか「これをやっているときが幸せ!」っていうことを持っていると思うのね。子育て期に入ると、時間や場所の制約で、それがなかなか出来なくなってしまうけど、一日3時間は出来るとか、この日はいけるとかそういう環境にあったりする。そういう「自分の好きなことを活かして人の役に立ちたい」って思っている人と、今まさに出産前後で体のことや家族のことで悩んでいるお母さんの両方をうまく結び付けて、助け合える関係をつくっていけたらええなと思っていますね。

そうやっていろんな人たちと繋がって行くことで、妊娠やお産だけじゃなくて、実際に産んで、その後に来てくれはる人もいる。子どもが思春期になって困ってんねんとか、更年期になってねっていう話もしてもらったり。助産師って、女性の一生を全体的にサポートさせていただくのがお仕事で、その中でもさらに核になるのがお産のところなんです。だから、女性の悩みすべてを見させていただく、そしてその方を取り巻いている家族の変化に合わせたご相談に乗っていくっていうのが私達の役割かなと思っています。助産院って、産む人しか来たらあかんの違うやろかって思われがちなんやけど、私はどんどん地域に開かれた場所にしていきたいんです。

実は、ここで助産院を始める前は違うエリアで5〜6件、助産所をするための物件を当たったりしてたんです。だけど、場所によっては地域の人に反対されて貸してもらうことができなくって。そのときに「ああそうか、地域の人に反対される場所でやるべきものじゃないな」って思いました。今、私たち家族がこの地域に引っ越してきて11年になるんやけど、いろんなご縁で住まいにも近いこの物件に出会って、町内の方に「助産院建てることになるんです、ご迷惑かけます」って挨拶して回ったとき、みなさん喜んでくださった。「赤ちゃんが産まれるんやろ、それは嬉しいわ」って。そうやって言ってもらえたんが私のなによりの安心ですね。私がこの場所を選んだとかそんなんじゃなくって、ここに建てさせてもらったことが本当に幸せなことやなって思います。

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